臨床教育学

他の教育方法学、教育心理学、教育行政学などと異なり、臨床教育学は、教育の理論と実践の中でこれを研究するという特定の対象によって、その性格付けを得ているものではない。むしろ、教育事象や言説、つまり教育の現場で教え、学びが展開されているその現場を見つめ、それを考察し、語る姿勢や語り方を従来のカリキュラム、おきまりの授業の展開といった既存の尺度からではなく、よりその現象に近づいていくということを考えようという手法で、哲学的、心理学的といった学問領域の枠を超えて、ということもあり得るとする。そのアプローチの仕方にはいくつかのタイプがあり、教育心理学、もしくは臨床心理学を軸としたもの、すなわち、心の問題を中心に教育支援の臨床的なアプローチとして試みるものと、教育学の中核、もしくは根底にある人間をどう理解し、どう捉えるかという問いから教育の根幹問題に迫る教育人間学を基盤としたものなど、この学問の方向性は、未知数である。

さらに、たんに既成の教育理論を現場で検証するという一方向的な構えではなく、むしろ教育現場と我が身を分かち合い、そこから学習指導や生活指導における問いや理論を立ち上げ、教育や人間発達援助の問題を考えるという研究方法を、教育臨床学や臨床教科教育学などという学問名で意識する場合がある。また学校現場のさまざまな問い、いじめ、虐待、不登校、暴力などなどの事象を、臨床的だというような立場もある。